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原点回帰―Running possible―

晴海まどかの日々精進ブログ

いい文章について考える ~省略との戦い

来月初旬に出す予定の『わーくしょっぷ』vol.2に向け、

ここ数週間校正作業などをやっておりまして。

(小説にとって)いい文章ってなんだろうとか色々考えたので、

そういうものをとりとめもなく行き当たりばったりで書いていく

シリーズを始めてみます。

※いつまで続くかは知りません。

※次回がいつかも知りません。

※個人的な見解を多分に含みます。

というわけで、今回は「省略」について。

マニュアルの文章だと、必要な情報をすべて読者に提示しなければならないので、

1~10まで情報があったらすべて書かないといけません。

例えば、Amazonにサインインする方法だったら、

「サインインをクリックする」

「登録しているメールアドレスを入力する」

「パスワードを入力する」などなど、すべての手順を記載します。

ところが、これが小説だとすると、1~10の情報があったら

何をどこまで書くか取捨選択しないといけないわけなんですよね。

以前、ライトノベルの改稿を仕事でしたことがあるという

ライターさんとお話ししたときに、

「なんでもかんでも書けばいいってわけじゃない」というお話を聞きました。

例えば、主人公が冷蔵庫から水を取りだすシーン。

「Aは冷蔵庫の扉を開け、ペットボトルの水を取り出し、

 扉を閉めると食器棚からグラスを取り出し、水を注いだ」

日本語的には何ら問題はないと思うんですが、ここでポイントになるのが

冷蔵庫の扉の開け閉めについてまで書く必要があるのかってことです。

「Aは冷蔵庫からペットボトルの水を取り出し、食器棚から取り出したグラスに注いだ」

これくらいスマートに書いても、読者がイメージするシーンは大差ないですよね。

上述の例はキャラの行動についてですが、感情表現についても

同様のことが言えます。

例えば、主人公が死体を発見したシーンがあるとして、

「転がっている死体を見て、驚いたAは手にしたグラスを落とした」

ぱっと見ではありだと思うんですけど、

「転がっている死体を見て、Aは手にしたグラスを落とした」

とだけ書いても、グラスを落としたという行動から、

Aが驚いていることは明白ですよね?

何もかも書かないで読者に想像させる余地を残した方がいい

というようなことを小説学校でもよく指摘されたんですが、

実際やろうと思うとなかなかこれが難しい。

逆に書かなすぎるとわけわらなくて不親切!って言われちゃいますし。

あと省略と言えば、一人称小説での「私/僕」

日本語というのは主語を省略できる便利な言語なんですよね。

一人称小説の場合、この「私」をどこまで省略するかでいつも悩みます。

は悲鳴も上げられずその場に尻もちをついた。今、の周囲には誰もいない。

 このままではが疑われるんじゃないかとは不安になった」

主語全部入れてみました。うっとうしいです。

どんだけ僕僕言えばいいんだよ。というわけで省略。

「悲鳴も上げられずその場に尻もちをついた。今、周囲には誰もいない。

 このままでは僕が疑われるんじゃないかと不安になった」

一人称だったら、本当に私/僕は必要最低限でいいんじゃないかと

思っている派です。特に、ほかの登場人物が出てこないようなシーンだったら。

「私」が思っていることなら言う必要ないし、

なんだか自己主張が無駄に強い感じがします。

(そういうキャラなら逆にいいのかな?)

ついでに、一人称小説でよくやってしまうのが「思った」「考えた」。

一人称なんだから、思ったのも考えたのも自明なんですよね。

前述の例でいうと、

「このままでは僕が疑われるんじゃないかと不安に思った

心内語なんだから「思った」とわざわざ言わなくてもそんなことわかります。

というわけで省略というか文末を変更。

「このままでは僕が疑われるんじゃないかと不安になった」

まぁこれについては文章のテンポとかを考えてわざと使うこともあるので、

一概に省略はしませんけど。

意識して使ってるのかそうじゃないのかは結構大事じゃないかと思います。

「思った」「考えた」が続くと文章が拙く見えますし。

というわけで、小説ではこういう省略が結構大事で、

それこそ肝じゃないかなーなんて思ったのでした。

冗長表現にも通ずるところはありますね。

とはいえ、省略するのって意外と難しいし、

勢いで書いてると結構やっちゃうんですよねー。

推敲段階でザクザク削除することもしばしば。

ちなみにですが、

わざと詳細に書くことで物語のテンポを変えるって手法もあります。

例えば、

「彼女は万歳した」

という文章を、

「彼女は握っていた拳を開き、肘をゆっくりと伸ばして両腕を天に突き上げた」

読んだときの印象はだいぶ変わると思うんですよね。

こういうのをシーンによって上手に使い分けられるようになりたいです(希望)。

何をどこまで省略するか、詳細に書くか。

正解がないだけに難しい。