原点回帰―Running possible―

晴海まどかの日々精進ブログ

バリー・ライガ「さよなら、シリアルキラー」感想 #読書週間

読書週間だーと言いながらなかなか読めてなかったというか
読み終わらなかったんですが、読み応えのあるこちらを昨日読み終えました。

さよなら、シリアルキラー (創元推理文庫)

さよなら、シリアルキラー (創元推理文庫)

 

今年5月に発売していた、海外もののYA小説です。
YAの情報を漁っているとよくこの本が紹介されてて、
ずっと気になってました。やっと読めた。

 

ここで、Amazonからあらすじ情報を引用してきましょう。

ジャズは高校三年生。町ではちょっとした有名人だ。ある日、指を切りとられた女性の死体が発見され、ジャズは連続殺人だと保安官に訴える。なぜジャズには確信があったのか―彼が連続殺人犯の息子で、父から殺人鬼としての英才教育を受けてきたからだ。親友を大切にし恋人を愛するジャズは、内なる怪物に苦悩しつつも、自ら犯人を捕えようとする。全米で評判の青春ミステリ。

というわけで、お話の進行などは基本的にサスペンスものなのですが、
「青春ミステリ」とあるように、物語の根幹は主人公ジャズの苦悩と成長に
主眼を置かれた作品です。YA作品として頻繁に取り上げられるのも納得。

主人公・ジャズは父親から殺人者としての英才教育を受けています。
それは殺人の技術的な面でも、人を操るための心理的な面でもです。
このため、友人やガールフレンドなど信頼したいと思っている人間と接するときも、
つい人をたくみに誘導して操ってしまいそうになってしまうことがあり、
その度に自己嫌悪に陥り自分を戒めます。
そして彼は、自分自身に巣くう怪物ゆえに、自分をあまり信用できていません。
いつか父親のように自分も人を殺してしまうのではないかと恐れています。

私は個人的に会話劇よりもこういう心理的な悶々を読む方が好きなので、
しつこいくらいのジャズの心理描写は引き込まれるものがありました。
あと、ジャズは時々神経が高ぶったり不安定になって思ってもないことを言ったり
するのですが、その感情の揺れっぷりがすごく伝わってきて唸る。
この作品では主人公の環境が特殊ではあるんですが、
ティーンズのこういう感情の振れ幅みたいなのってやっぱ特有な部分があると
思うんですよね。こういう振れ方は大人になるとしないなとか。
うまいなぁと思った部分をちょっとだけ引用。

 殺したいとか殺したくないとかじゃない。ただ……殺せるってことだ。たとえば、足が速いみたいなものだ。自分がすごく速く走れるとわかっているのに、どこかをてくてく歩かなきゃならないとしたら、走りだしたくならないか。全速力で。それと同じような感じなんだ。

電書で読んだので全体のボリュームがどれだけなんだかよくわかってませんが、
そこそこ読み応えはありますが、YAなので文章表現は非常にわかりやすくて
読みやすくすんなりと読めます。

こういう、ストーリーの軸があるけど、心理描写も丁寧に描いてる作品が私は
やっぱ好きです。こういうのに出会えるのがYAってジャンルだと思うんですよね。
日本じゃYAとラノベごっちゃにされてる感もあるけど、やっぱ違う。
ラノベラノベでいいしたまに読みますけども。やっぱYAいいなぁと思いました。

ちなみに最後まで読んで解説を読んだら、これ三部作だそうで、
まじかよ!次出てるのかよ!と思って調べたら二作目が今月発売でした。予約可。

殺人者たちの王 (創元推理文庫)

殺人者たちの王 (創元推理文庫)

 

ちょっと前に読んだ「毒見師エレーナ」も三部作だったんですが、
三部作って定番なのかな。

サスペンスとして読んでもなかなか変わった設定で面白いと思います。
おすすめです。