浦久俊彦「フランツ・リストはなぜ女たちを失神させたのか」感想
今日読み終わったので感想。
もともと音楽系の本の資料を探していてチェックしていた1冊で、
先日のポイント還元セールのときにここぞとばかりにポチりました。
タイトルはかなり煽ってますが、中身はいたって真面目ですばらしかったです。
リストはピアニスト・作曲家としてクラシック界では有名ですが、
意外と伝記などは少なくあまりどんな人物か知りませんでした。
そのリストの生涯、取り巻く歴史的背景、音楽やピアノの歴史まで、
幅広く紹介された1冊です。
ピアノといえばショパンが有名なのですが、
そのショパンとリストが実は親交のあるいい友人同士だったとか、
リストの師匠がベートーヴェンの弟子でもあるチェルニーであるとか、
ピアノ曲好きにはほほぅと思ってしまうような交友関係もたくさん紹介されています。
また、リストはヨーロッパの音楽にソフト面でも金銭的な面でも
多大に貢献しているのですが、
特定の故郷を持たないというその生まれがゆえに、
ショパンなどに比べて語られる機会が少ないというのは皮肉な話だと思いました。
また、ピアノという楽器がどう発展してきたかという歴史も紹介されていて、
ピアノメーカーのデモンストレーションの一環で
幼いリストがリサイタルデビューした、という話はまったく知りませんでした。
ピアノという楽器は産業革命と切っても切り離せないのですが、
効率化を目指した平均律の申し子であるという点も抑えておくとより面白いかも。
音律の話はちょっと前に読んだコチラの本が面白かったです。
リストと言えば、ちょっと前に「ラ・カンパネッラ」のことを調べていて、
異なるバージョンのものに興味を持っていたのですが、
ますます聴きたくなりました。
またこの本の後半に、テレビもラジオもない時代にいかに音楽が
人々を熱狂させたか、というような一説があって考えさせられました。
現代は音で溢れかえっていて、私など作業中はイヤホンが話せません。
音が身近でなかった世界で聴く音楽がどれだけのものだったか。
そういう想像力をかき立ててくれるような一説がいくつもあるのも印象的でした。
この著者さんの語り口は非常に巧みで読ませられました。
なお、この本からは徹底的に音楽の専門用語が廃されていて、
音楽の知識がまったくない状態で読めるように工夫されているそうです。
リストのことだけでなく、19世紀のヨーロッパ文化に興味がある人にも
面白く読めるかと思います。
というわけで非常に興味深く読めた本でした。オススメです。