今野真二「常用漢字の歴史」感想
今日こちらの本を読み終わりました。
ちまちま1章ずつ読み進めてた新書。なかなか興味深かったです。
文芸だとあんまり関係ないんですが、私が普段やっている校正の仕事だと
記者ハンドブックを参考にすることが多くて、このハンドブック掲載の表記って、
基本的には常用漢字に従っているのですね。
この本は、この常用漢字の歴史や生い立ちについて論じた本になります。
常用漢字が数年前に改訂されたことはもちろん意識してたんですが、
その前にも色んな漢字表があって(当用漢字表とか)、かつそれらの生い立ちの
背景みたいなモノってまったく意識したことありませんでした。
これからも常用漢字とのお付き合いは続くんだろうなと思いつつ、
こういう歴史的背景に少しでも触れておくのは悪くないですね。
本では漢語との関係とかすごく細かく漢字表の歴史が述べられてるのですが、
すごくざっくり解釈すると、教育レベルの底上げをするには読み書きが大事で、
そのためには使用する漢字を制限しよう、という考え方もあったという話。
常用されてる漢字を規定することで、効率的に読み書きできるようにしようと。
だけどこの「常用されてる」をどうやって判断してきたのかとか、
本当にその漢字は常用されてるの?とか、
そういうことも同時に考えないといけないというわけです。面白いです。
こういう「広く普及させるために平均化する」みたいな話って常用漢字に
限った話ではないのですよね。例えば標準語。こちらの戯曲を思い出しました。
あとは音楽になりますが、平均律がそうですね。
現在普及してるドレミの音階というのは、1オクターブを均等に割った
平均律というのが主流なんですが(ピアノとかギターがそう)、
和音をより響かせるには純正律という均等割じゃない音階にする必要があるのですね。
でも均等じゃないので技術力とか音を判別できる耳が必要になるわけです。
なのでちょっと和音は濁るけど、技術力が無くても奏でられる平均律が
ピアノの普及とともに広がっていったという。なんて話はこちらの本から。
音律と音階の科学―ドレミ…はどのようにして生まれたか (ブルーバックス)
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漢語にも漢字にも別に詳しいわけではないし、
細かい部分はさらっと読んでしまったのですが、
こういうのも知っておいてもよいなぁと思った1冊でした。