森博嗣「小説家という職業」を読んだ
買ったのは確か1月だった気がしますが、
今日読書会に参加した行き帰り+αの時間で読みました。
タイトルのままですが、「小説家」というものを職業にするのであれば、
こういうことを考えた方がいいとか心構えだとか、そういうのが主に書かれた本です。
森先生の作品は「すべてがFになる」しか読んでないのであれですが、
とにかく感情論や精神論を一切差し挟まないで、
自論を展開されているのが印象的でした。
基本的にすべての結論に理由があるので、納得します。なるほどなと思います。
契約書が出版企画が始動すると同時に交わされないのっておかしいよねとか、
出版業界あるあるのおかしな話、みたいなのもそのまま書かれてて、
そういうのはすごくわかるし参考になりました。
ビジネスとして考えると、確かにおかしいことたくさんあるんですよね。
あと、森先生が電子書籍肯定派なのは心強いような気持ちになりました。
音楽業界と似ているという話はこの本でも出てきてて、
早い段階から電子書籍でがんばっておくのも悪いことじゃないかもなと。
映画「オデッセイ」じゃないですが、ちゃんと計画を立てて期限を守って、
ルートを考えて取り組めば結果はついてくるのかも知れないなと思わされる本でした。
で、ここから先はあくまで私個人の感情的な感想になるんですけども。
なんかですね、読み終わってから少しですが、悲しくなったんですよね。
小説を読むのが好きな人は作家に向かない、
というようなことが繰り返し書かれていたからかもしれません。
私には別に「文学をやってやろう」みたいな高い志は皆無だし、
どちらかといえば軽くてさくっと読める楽しいものをたくさん書きたいくらいに
思ってるタイプなのですが、自分で思っていた以上に本とか文学というものが
好きなのかも知れないということを再確認してしまいました。
森先生の作品を読めばこの印象も変わるのかもしれないですけども。
小学校低学年の頃から小説を読むのが当たり前で、
「小説を読まない」なんて選択肢を考えたことがないせいかもしれません。
この本で繰り返し「小説はマイナ」だと書かれてるのですが、
私自身は年間で読んでる活字の本の9割近くが小説で、
でも確かに思い返してみれば小説コーナーなんて本屋の一部なわけで、
なのにマイナという意識がなかったことに驚かされたりしました。
この本で繰り返し述べられてる「本が好きな人たち」に自分も入ってるんだなーと。
まぁでもそれはしようがないしそこから変わりたいというわけではないのですが。
なんか、こういう風に物事を冷静に物事を分析してものを見れるというのは
きっと森先生ならではのことで、こういう風にものを考えている人もいるんだ、
ということを知れたという意味でも興味深い本でした。
小説は誰かの人生を疑似体験できる、なんてことはよく聞かれますが、
それに近いものを感じました。
そんなわけで、非常に面白かった反面、なんか自分の好きなものとかそういう価値観の
再認識をさせられるという思ってもみなかった読後感の1冊になりました。